中国の四川省から青海省までバスに揺られたときもそうだった。チベット人が暮らす標高四千メートルを超える道筋だった。真冬のことで、気温はマイナス二十度にもなるというのに乾燥していて、バスは砂煙のなかを何日も走りつづけた。ようやく蘭州の街に辿り着き、十日ぶりにシャワーを浴びた。そのときもどす黒い泡がたった。ここまで汚れるのに中国は十日かかったが、インドはたったひと晩で体が真っ黒になる。なんという国だろうか。
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カメラマンの顔もいくぶん白くなった気がする。おそらく僕の顔もそうなのだろう。だいぶ軽くなった体をベッドに投げ出した。腰が伸び、この世のものとは思えない快感が体を駆けめぐった。なにか血がようやく流れはじめたような感覚だった。ひと眠りした。目が覚めると、天井にインドの地図が浮かんでくる。インドのアジアハイウェーの四分の一も進んでいなかった。そしてパトナーの街で、その進路に暗雲が垂れ込めてしまっていた。