翻訳の好循環は、原文を読む力、原文を理解する力、日本語を書く力など、翻訳者の実力のあらゆる面にいえることである。翻訳者は翻訳を続けるなかで原文を読む力を高め、内容を理解する力を高め、日本語を書く力を高めていく。もっとも、好循環があるところには悪循環もあることに注意しておくべきだ。翻訳の悪循環の始まりはたいてい、見境のない受注からはじまる。とくに警戒が必要なのは営業主導型の性格が強い翻訳会社からの仕事である。この種の翻訳会社に発注する顧客は、翻訳の品質よりも価格を重視する傾向が強い。発注の仕方は不規則で、夕方に発注して翌朝に納品するよう求めたり、金曜夜に入る原稿を月曜朝一番に納品するよう求めたりする。